ブックタイトル第29回 国民文化祭・あきた2014プレガイド 2013年10月発行
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第29回 国民文化祭・あきた2014プレガイド 2013年10月発行
1886 年12 月25 日、山本郡下岩川村長面( 現三種町) に生まれ、その生涯を創作舞踊に捧げた石井漠。帝国劇場の歌劇部1 期生として舞踊の世界に入り、イタリア人のローシーから古典バレエの基礎を、三浦環などから音楽を学んで帝劇オペラの第一線で活躍。その後、欧米に渡り現代舞踊を研究し、黎明期の宝塚歌劇団の指導を経て「モダン・ダンス」の先覚者となり、新たな境地を切り拓いた。 1928 年には、東京自由が丘に「石井漠舞踊研究所」を開設。伝統にとらわれない新しい舞踊の確立と、後進の育成に力を注ぐ。その熱意は研究所開設から80 年以上経った今も教え子たちに受け継がれ、現在「石井漠記念バレエスタジオ」と名称を変えた学舎では、クラシックバレエ、モダンバレエ、創作舞踊、民族舞踊、キャラクターダンス、舞踊詩など幅広いスタイルを取り入れたカリキュラムの下、スポットライトを浴びる日を夢見る生徒たちが連日汗を流している。 1953 年、以後200 回以上の公演を果たすことになる創作舞踊の金字塔「人間釈迦」を初演。1955 年には日本における舞踊の発展に尽力したことが評価され紫綬褒章を受賞し、名実ともに舞踊家として日本の頂点に立った。1962 年、慢性甲状腺炎を患い75 歳で死去。3 カ月前まで舞台を務めるなど、最期まで舞踊一筋、自ら称した「をどるばか」を貫いた。 故郷の三種町にはメモリアルホールがあり、「人間釈迦」「失念」「山を登る」など漠の作品をイラストで紹介したパネルをはじめ、愛用の衣装、家族にあてた手紙、生前のインタビューや実際に踊る姿を収めたビデオを鑑賞できる。 最後に意外と知られていないトピックを一つ。男鹿市北浦の真山神社で行われる神事「柴灯祭」と、伝統行事「ナマハゲ」を組み合わせた観光行事で、毎年2 月の第2 金・土・日曜日に行われるなまはげ柴灯( せど) まつりの演目のひとつ、「なまはげ踊り」の振り付けを担当したのが何を隠そう石井漠。ダイナミックな太鼓の響きをバックに、雪の降りしきる境内で繰り広げられる勇壮な舞は、ひとたび目にするとしばらく脳裏に焼きついて離れないほど。機会があれば、ぜひとも現地でその迫力を味わってほしい。ちなみにこの演舞に曲をつけたのは、オペラから合唱音楽、バレエ音楽、室内楽まで多岐にわたる作品を手がけた作曲家で、漠の息子の石井歓。 「舞踏」という、かつてない全く新しいジャンルを切り拓いた土方巽。西洋舞踊の物真似ではないダンスの創生を目指し、土方が1950 年代に始めた「舞踏」は、今や日本固有の文化と前衛舞踊の要素を併せ持つ、ダンスの1 ジャンルとして世界中に認識されている。 秋田市に生まれ育ち、秋田県立秋田工業学校を卒業後、市内でモダンダンスを学んだ土方は、20 歳の頃から上京と帰郷を繰り返しながらダンスの経験を積み重ねていく。人生の転機は1959 年、31 歳の時。この年に発表した「禁色」は、その過激で倒錯的な内容に非難の声があがったものの、多大なインパクトを与え、ダンサーとしての地位を築くことに成功。その後もエロティシズムとバイオレンスを強調した前衛的で実験的な作品を次々と発表。1972 年には東北回帰をテーマとする作品を発表し、観客動員数8,500 人以上という、舞踏史上における記念碑的な公演を成功させた。 1978 年、初の海外公演が行われると、土方が創造したダンスは瞬く間に「BUTOH」としてヨーロッパ全土に広がり、舞台芸術の一潮流に。そして今なお志を継ぐ教え子たちが第一線で活躍し、世界中で土方研究が推進されている事実は、生前の土方の影響力がいかに大きいものであったかを如実に示している。 代表作に「バラ色ダンス」「肉体の叛乱」「疱瘡譚」「静かな家」「ひとがた」など。俳優として「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」、「日本の悪霊」をはじめとした映画にも多数出演。著書に『土方巽全集』、『病める舞姫』など。 なお、慶應義塾大学アート・センターでは、土方の舞踏活動に関する多くの資料を保有している。公演のチラシ、ポスター、チケット、パンフレット、プログラムといった印刷物はもちろん、新聞や雑誌記事、オブジェや美術作品、1 万点を超える公演の記録写真から、創作のインスピレーションとなったことを示す本人の書き込みがある蔵書まで網羅している。デジタルデータ化された資料の一部はWeb 上でも閲覧可能なので、興味のある方は一度アクセスしてみては。慶應義塾大学アート・センター「土方巽アーカイヴ」http://www.art-c.keio.ac.jp/archive/hijikata/偉大なる舞踊詩人、石井漠。走り続けた開拓者、土方巽。舞踊・舞踏 No.3秋田の文化コラム26